ゲーム大手の「旧作に頼る戦略」成功、ダウンロード販売が普及「１本で何度でも稼げる」

ゲーム大手の稼ぐ力が高まっている。コロナ禍による巣ごもり需要を追い風に、定番ソフトに長く遊んでもらう仕掛けを施し、ロングセラーに育てる戦略が実を結んだ。ヒット作に恵まれるかどうかが収益を左右してきたビジネスモデルが、変わりつつある。

　任天堂のソフト「マリオカート８　デラックス」は、家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」向けに発売して５年たつ今も、売れ続けている。ゲーム総合情報メディア「ファミ通」によると、最新の国内月間売上本数ランキングで４位に入った。世界の累計販売本数は３月時点で、スイッチ用ソフト歴代トップの４５３３万本に達している。

　カプコンの「バイオハザード」シリーズも、旧作の売れ行きが好調だ。２０１７年発売の「バイオハザード７　レジデント　イービル」は年間１００万本超売れている。累計販売本数は１０００万本を突破した。カプコンは、前年度に発売した旧作ソフトの販売本数が、全体の７割超を占める。辻本春弘社長は「定番ソフトを長期販売できることが安定成長を支えている」と胸を張る。

飽きさせない
　発売から時間のたったゲームが売れているのは、店頭販売から、インターネットでソフトのデータをゲーム機に取り込んでもらう「ダウンロード販売」に移行したことが大きい。

　ネットで直接販売するため、新作を重視する量販店側の意向に左右されにくい。人気シリーズの旧作を大幅値下げしてシリーズの世界観に触れてもらい、ファンを増やして新作の購入につなげる戦略もとれる。

ダウンロードの仕組みを活用した工夫も成果を上げている。ソフトの発売後、新たなキャラクターやシナリオを有料で追加配信することができる。「１本で何度も稼げる」（ゲーム関係者）ようになった。

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　社会現象にもなった任天堂の「あつまれ　どうぶつの森」は、２０年３月の発売後も、ゲーム内で発生する季節限定のイベントを継続的に配信している。昨秋には遊びやすくするため、機能を大幅にアップデート（更新）した。「飽きさせない工夫」（任天堂広報）が息の長い人気を支えている。

マンネリ懸念も
　製造や輸送にかかる費用が削減できたことも、稼ぐ力の改善につながっている。

　２２年３月期の売上高に占める営業利益の割合は、任天堂とカプコンが３０％を超え、コーエーテクモホールディングス（ＨＤ）は５０％近くに達した。コーエーテクモＨＤの鯉沼久史副社長は「新作とリピート（旧作）販売の両輪が成長を実現した」と話す。

　ヒットした旧作に頼る戦略は、新しいシリーズの開発にかける資金や人材の投入が手薄になり、「マンネリ化」を招く懸念もある。ファミ通グループの林克彦代表は「日本のソフト大手は人気シリーズを多数抱えているのが強みだ。だが、いつまでも売れ続ける保証はなく、常に新しいシリーズを開発することが欠かせない」と指摘している。